シンヤ先生のレッスンこぼれ話2

こぼれ話2

あさこ先生がプロのテストを受けた時の話です。
東京会場でカップル試験を受けたのですが、周りはレベルの高い人ばかりでした。
キャリアも、おそらくあさこ先生が一番短期間だったのは確実です。確実にあさこ先生が一番下手でした。(笑)
それでも私が組めば、たとえどんなに下手でも合格させる自信はありましたので、さほど心配していませんでした。

ところが・・・。あさこ先生の様子がおかしい。
何やら小声で「どうしよう・・・」としきりに繰り返しています。
「どうしたの?」と尋ねてみると、極度の緊張から、頭の中が真っ白になってしまったのだそうです。

どうやら今日は、その「たとえどんなに下手でも」を証明しなければならない日のようです。
そこで、作戦変更。最低合格点を狙って、ステップの難易度を下げ、ノーミスで踊って合格を目指すことにしました。

「練習してきたステップはすべて忘れて、思い出そうとしないこと。とにかく体を密着させていること。」
それだけを言い聞かせ、私はステップを初心者〜初級レベルに下げて踊りました。彼女はそれにすら気づいていません。
「このまま何とか無難に終われそうだ」そう思った矢先・・・なんと彼女がリードを無視して足を出してきたのです。

その瞬間、とっさに私がしたこと。それは・・・・
彼女の足に合わせて自分の足を出して、同じステップを踏んだのです。つまり私が間違ったステップ踏んだことにしたのです。
カップル試験は、男性はリード、女性はフォローを見る試験です。相手の先生が間違ったステップを踏んだとしも、採点に影響しないはずです。一方、女性の受験者がリードを無視して間違ったステップを踏めば、それは減点されます。今日の作戦では1点でも減点されれば落第になります。



じつはこのカップル試験にはとても気を付けなければならないことがあって、それは相手の先生があまり上手に踊らないことなのです。私がそこに気がつくことができたのには、自分が同じ試験を受けた時の苦い経験があったからなのです。

昔、自分がはじめてプロの試験を受けたとき、相手をしてくださったのが、ラテンの元全日本ファイナリストの女性でした。
スタンダード種目では先生は至って普通に相手をしてくれていたのですが、ラテン種目になった瞬間、彼女の目の色が変わりました。
おそらくダンサーの習性なのでしょう。輝きを放ちながら生き生きと踊り始め、僕は振り回されて、ついていくのがやっとでした。

後日、採点が発表された時、ラテン種目はすべて合格ギリギリの最低点でした。
他の採点はすべて満点近くだったので、ラテンの結果次第では160名中、首位で合格できていたかも知れません。
結果は20位くらいだったと思います。悔しかったです。もっとも、もらえる資格は同じなのですが。(笑)



さて、あさこ先生の結果ですが、後日、見事に合格してました。
一方、同じ試験を受けていた某名門教室の、彼女より3倍くらいキャリアのある女性は落ちたそうです。
私は現場でその方の踊りを見ていましたが、彼女はせっかくとても上手なのに、相手の先生がとても上手く踊っているせいで見劣りしているなという印象でした。



というわけけで、今回も私が言いたかったのは、リード&フォロー、大事ですよ!ってこと。
自分が上手に踊るだけではダメなんですよ。プロの試験ですら、そうなのですから。

Back